教室紹介

年度報告

2020年度報告

今年も、COVID-19が蔓延し、現在は第5波による緊急事態宣言が開始されるところです。そのために病院勤務の方々は、全ての救急対応に大変ご苦労されたことと思います。医療従事者のみならず、国民全体にワクチンの早い接種が期待されます。

当科では、脳卒中を含む神経救急を藤堂謙一講師(現診療局長)が中心となって対応しました。昨年度は、私も藤堂先生や大学病院の事務方と一緒に、吹田、茨木、箕面などの消防署に伺い、大阪大学の脳卒中医療体制の説明をしてきました。その甲斐もあってか、コロナで入院を制限する中、脳卒中関連の救急は前年とほぼ同様の181件でした。血栓回収は19件と例年とほぼ同数でした。研究面では、脳卒中グループの論文が増え、2020年には16篇の報告をしました。癌治療を積極的に行なっている当大学では、癌サーバイバーが増加したこともあり、癌関連脳梗塞が増えています。現在臨床コホート研究に加え、継続して基礎研究も進めています。教育面では、ポリクリを含めた実習を受けられない学生がおり、困っております。診療手技をwebで教えるには限界がありますが、動画などを駆使して神経学の面白さを伝えていきたいと思います。

卒後教育に関してですが、内科のシーリング問題があり、都市部での研修が自由にできなくなってきました。コロナ罹患者が多い都心部では、治療を担当する内科医が全く足りなくなっている状況なのですが、シーリングに関しては状況が変わらないようです。当科では、30に近い関連病院と連携して、できる限り希望の研修ができるように工夫をしています。後期研修から病院を探しても、希望のところでは勤務できないので、初期研修から希望を聞いて、大学病院と連携するシステムを活用しています。そのせいか、最近では、全国の大学からの問い合わせ、見学も多くなっています。大阪大学では、研究に興味がある学生は、一定期間基礎研究ができますので、基礎研究コースを設けています。短期間ですが、臨床に重点を置いたコースもあります。随時見学を受け付けているので、希望者はこちらに連絡をください(kenshu@neurol.med.osaka-u.ac.jp )。

今年度から、村山繁雄先生が子どものこころの分子統御機構研究センターのブレインバンクリソースセンター特任教授に就任されました。神経内科学でも併任で、剖検時のBrain Cuttingに加え、CPC、病理カンファレンスや回診にも参加して頂き、臨床に重点をおいた教育、研究活動にご尽力頂いています。大阪大学のみならず、国立病院機構大阪利根山医療センターとも連携し、大阪ブレインバンク拠点を目指した活動をされています。入院期間が短くなることから、剖検の機会が極めて減ってきていますので、研修医にはできるだけBrain Cuttingなどを経験できるようにしています。村山先生には、若い医師を含め研修医と神経病理を勉強する機会をできるだけ増やしてもらっています。今後は関連病院との連携を密にして、神経病理の勉強会などを推進する予定です。私たちも村山先生のご指導のもと、神経病理の研究として、豊中病院の荒木克哉先生(現あらきクリニック院長)とSpring8で特殊な顕微鏡を開発し、剖検脳における蛋白構造変化を観察し、報告してきました(Sci Rep 2015, 2016, 2020, PNAS 2019)。

先日日本神経病理学会(理事長柿田明美先生)理事会において、2023年に日本神経病理学会総会の大会長を拝命しました。同時に2023年日本神経化学会(理事長岡野栄之先生)の大会長今泉和則先生と合同で大会を開催することになりました。私が両方の学会で基礎、臨床の連携を促進する委員長を拝命しており、今回の合同大会開催を企画しました。「第66回日本神経化学会/第64回日本神経病理学会総会学術研究会合同大会」として、2023年7月6日(木)-8日(土)、場所は神戸国際会議場に決定しました。Single cell RNA seq解析など剖検脳を用いた報告も増えつつあります。それぞれの学会で、新たな交流を推進できる、ワクワクするような総会にしたいと思っております。先生方のご参加をどうぞよろしくお願いします。

第62回日本神経学会総会(大会長:高橋良輔先生)で大変嬉しいことがありました。レジデントクリニカルトーナメ ントで、⼤阪⼤学神経内科のチームが優勝しました。快挙を成し遂げたのは、当科大学院生の和田山智哉、木原圭梧、西池氏暉の3名のチームです。Web開催なので会場での胴上げこそできませんでしたが、後日素晴らしいダルが各人に届き⼀緒に写真を撮りました。彼らの今後の活躍を期待します。

個人的なことですが、昨年度末にも嬉しいことがありました。12月の今年度最後の医局会で、例年通り私が年末の挨拶をして席から立ち上がった時に、医局長の中森先生が「これから重要なお話があります」と言って前に出てきました。突然のことで緊急事態なのかと驚きましたが、なんとサプライズで私の還暦の祝いの会を開いてくれたのです。私は人生の節目を医局の先生方やスタッフの皆さんに祝ってもらえた幸せを、今しみじみと感じています。この場を借りて皆さんに感謝したいと思います。60歳になったとはいえ、まだやりたいことや新しいアイデアがたくさんあります。人生を振り返るのはもう少し先にして、これからも教室の発展に尽力したいと思います。

大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学 教授 望月秀樹
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