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第376回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)

第376回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)
日時平成29年4月10日(月)18:00~
場所大阪大学医学系研究科附属 最先端医療イノベーションセンター棟1階 マルチメディアホール
演題腸内フローラと慢性便秘症
演者

京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器内科学 准教授
京都府立医科大学附属病院 内視鏡・超音波診療部 部長
内藤裕二先生

概要

便秘とは排便回数の減少、排便の困難さ、硬い便、不完全な排便の感覚、腹痛、腹部膨満感などを呈する状態とされている。国民の30%が罹患しているとされ、若年女性、中年男性での罹患率が高く、重要な問題となりつつある。にも関わらず正しい病態理解に基づいた適切な治療が行われていないことも多く、良好な医師−患者関係が築きにくい疾患でもある。さらには、慢性便秘症によりリスクが増加する疾患群として、多発性硬化症、パーキンソン病、慢性腎疾患、虚血性心疾患があり、適切な便秘治療が重要である。特殊なタイプの便秘を除き、多くの症例は腸管拡張を伴わない機能性便秘と考えられ、食を含むライフスタイルの改善が重要であり、若年女性の強固な便秘には長期の治療が必要なことが多い。ブリストル便性状スコアによって評価した便性状と腸内フローラの関連が報告されている。それによると、下痢の程度が進むにつれて腸内フローラの多様性が低下し、その種類も変化する。特に、ブリストル便性状スコア1の硬い便による重度の便秘患者では、プレボテラ属が多い2型(P型)の人はほとんどなく、さらにアッカーマンシア菌やメタン産生菌の菌量が低下する。上皮機能変容薬とも呼ばれるルビプロストンは、小腸の腸管内腔側に存在するClC-2クロライドチャネルを活性化し、腸管内に水分分泌を促進し便秘治療に有効である。さらに上皮の粘液分泌にも影響し、結果的に粘膜関連腸内細菌叢に影響を与えることなど、上皮細胞間タイトジャンクション機能を強化することなども見いだされ、特に高齢者の慢性機能性便秘には頻用されつつある。本セミナーでは、無菌で生まれたヒトの腸内フローラはどのように決まり、どのように変化・改善するのかについて最近の情報を提供し、栄養学的アプローチの重要性についても考えたい。

世話人 消化器外科Ⅰ 森 正樹
E-mail: mmori@gesurg.med.osaka-u.ac.jp
次回、377回CNCは、井上 善文先生のお世話で平成29年5月8日(月)開催予定です。