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第410回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)

第410回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)
日時

令和5年6月12日(月)18:00〜

開催方法

大阪大学医学部講義棟2階 B講堂(吹田市山田丘2-2)

テーマ・講師

細菌叢研究の進展によりもたらされた微生物学研究の新たな局面
大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生体病態情報科学講座 
病原微生物・マイクロバイオーム学 教授 岡本 成史

概要

人類は今日に至るまで感染症の脅威に向き合い、その撲滅にむけて闘い続けてきた。感染症の大多数は様々な病原微生物の外因感染によるものであり、これまでの微生物学、感染症学研究における対象の中心であった。19世紀後半にRobert Kochが提唱した「Kochの4原則」により、感染症の原因となる病原微生物の特定方法が確立し、多くの感染症の原因が明らかとなった。そして、それらの感染症に対する予防、治療法が次々と開発された結果、19世紀以前と比較して感染症による死者数は激減し、平均寿命の飛躍的な延伸に大きく貢献している。

一方、病原微生物の外因感染による感染症とは異なる、微生物による新たな疾患の形態が見出されつつある。例えば、加齢や有病状態による免疫力の低下などに起因する日和見感染症が近年問題となっているが、その多くはヒト体内で共生している微生物による内因感染である。さらに近年、免疫疾患、神経疾患、生活習慣病などの非感染性疾患の発症にヒトと共生する微生物の関与が示唆されつつある。

ヒトの腸管、口腔、鼻腔、咽頭、気道、女性器、皮膚などには多くの種類の微生物が共生し、常在微生物叢を形成している。常在微生物叢が我々にどのような影響を及ぼしているかについて長い間不明であった。しかし、今世紀初めに出現した次世代シーケンサー(NGS)を契機に常在微生物叢、特に常在細菌叢に関する研究が飛躍的に進展した。そして、ヒトの各部位における常在細菌叢の構成、さらには年齢、環境、人種、性別による常在細菌叢の多様性などが明らかにされた。さらに、何等かの原因により正常な細菌叢の構成と異なる構成に変化するディスバイオーシスがいくつかの内因感染、非感染性疾患の発症に関連することが示唆され、現在、その詳細について活発に研究が進められている。

本講演では、今世紀における常在細菌叢研究の進展によってもたらされた微生物研究の新たな局面について、私が関わってきた皮膚常在細菌叢の構成変化と褥瘡後感染との関連、腸内細菌叢の構成変化と高血圧、脂質異常症との関連に関する研究成果などを紹介しながら概説していきたい。

※本研究会は医学系研究科 単位認定セミナーです。
※本研究会はどなたでもご参加いただけます。

世話人: 保健学科 生体情報科学 木原 進士
E-mail: skihara@sahs.med.osaka-u.ac.jp
次回、第411回CNCは高度救急救命センター 小倉裕司先生のお世話で2023年10月16日(月)開催予定です