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第396回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)

第396回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)
日時

平成31年4月8日(月)18:00〜

場所

大阪大学医学部講義棟2階B講堂(吹田市山田丘2-2)

演題

重症病態における腸内細菌の重要性と最近の治療トピック
~シンバイオティクスや水素水の有用性など~

講師

兵庫県立西宮病院   池田 光憲 先生

概要

腸管には膨大な数の腸内細菌が腸内フローラを構成して生体の恒常性維持に大きな役割を果たしており、様々な疾患との関わりが指摘されている。救急・集中治療領域では、重症感染症、外傷、熱傷などの過大な侵襲はもとより、抗生剤や鎮痛薬などの薬剤が腸管に多大な影響を及ぼし、腸内環境を著しく変化させる。我々はこれまでに、全身性炎症反応(SIRS)などの重症患者において腸内細菌叢の構成が急激に変化し、総偏性嫌気性菌数の低下や細菌叢の構成比率(Bacteroidetes門/Firmicutes門)の変化が感染性合併症や予後に関連することを報告してきた。また、腸内細菌の代表的な代謝産物である短鎖脂肪酸が急性期より著しく減少し、腸管内pHを上昇させて腸内環境の悪化の一因となり得ることを見出した。短鎖脂肪酸は腸管において免役・炎症応答の制御に関与することは広く知られており、我々が行った敗血症モデルマウスの糞便を用いた網羅的メタボローム解析においても、短鎖脂肪酸が重要な鍵を握ることが示唆された。このような観点から、腸内環境を維持・改善させることが有用であることは論を俟たず、シンバイオティクス療法などの腸管内治療が注目を集めている。
本講演では、重症病態における腸内フローラや代謝産物の動態変化およびシンバイオティクス療法の有用性について、我々の基礎・臨床研究の結果を中心に説明する。さらに、新たな腸管内治療の方法として、分子状水素の応用について言及する。分子状水素は2007年に抗酸化・抗炎症作用を持つことが報告されて以降、医療用ガスとしての研究が急速に進んでいる。我々の敗血症マウスモデルを用いた動物実験においても、水素水の投与が腸内細菌叢の破綻や腸管上皮バリア障害、バクテリアルトランスロケーションの発生を抑制し、生存率を改善させることが示された。水素水の治療応用について、最近の知見も交えて紹介する。

世話人:高度救命救急センター 小倉 裕司
 E-mail: ogura@hp-emerg.med.osaka-u.ac.jp 
次回、第397回CNCは、看護実践開発科学 梅下浩司先生のお世話で平成31年5月13日開催予定です。