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第403回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)

第403回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)
日時

令和2年1月20日(月)18:00〜

場所

大阪大学医学部講義棟2階D講堂(吹田市山田丘 2-2)

演題

『サルコペニア・フレイルを合併したCKDの栄養管理
~CKD・透析患者におけるたんぱく制限の功罪~』

講師

大阪大学大学院医学系研究科腎臓内科学
猪阪 善隆

概要
 「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」では、CKDの進行を抑制するためにたんぱく質摂取量を制限することが推奨されている。腎臓は老廃物の排泄に関わる臓器であり、腎機能が低下した患者に対して、摂取量を調整する食事療法、特にたんぱく質制限は100年以上の歴史があり、CKD患者の治療の根幹の一つでもある。CKD患者が過剰なたんぱく質を摂取すると、糸球体過剰濾過により腎障害を進展させるとともに、たんぱく質の代謝産物が尿毒症物質として体内に蓄積する。そこでCKD進行抑制・腎代替療法導入遅延を目的として、従来たんぱく質摂取制限の食事指導が行われている。
 一方、近年の超高齢社会を反映して、サルコペニアとフレイルが注目されている。各々の診断基準を含めた診療ガイドラインやガイドが示されている。これらの発症には多くの要因が関与すると考えられているが、たんぱく質摂取量の不足は重要な因子である。また、両者とも比較的新しい疾患概念であり、これらを合併した慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に直接介入したエビデンスは必ずしも十分ではない。慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版」ではCKD 重症度分類の腎機能区分別に、エネルギー・たんぱく質・食塩・カリウムの推奨量が示されているが、たんぱく質制限の画一的な指導は不適切であり、個々の患者の病態やリスク・アドヒアランスなどを総合的に判断して、たんぱく質制限を指導することが推奨されている。サルコペニアの予防・改善のためには、十分なたんぱく質摂取量が有効と考えられていることから、CKDの食事療法としてのたんぱく質摂取量の制限とは両立しない。このため、日本腎臓学会では、CKDの経過中にサルコペニア・フレイルを合併した場合の食事療法の考え方を検討し、「サルコペニア・フレイルを合併した保存期CKDの食事療法の提言」を上梓した。今回のCNCでは、この提言を踏まえ、サルコペニア・フレイルを合併したCKDの栄養管理として、CKD・透析患者におけるたんぱく制限の功罪について、お話したい。

世話人:腎臓内科学講座 猪阪善隆
E-mail:isaka@kid.med.osaka-u.ac.jp
次回第404回CNCは内分泌代謝内科学 西澤均先生のお世話で2月3日(月)に開催予定です。