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第386回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)

第386回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)
日時平成30年4月9日(月)18:00~
場所大阪大学CoMIT棟1階マルチメディアホール
演題消化器外科領域で栄養はどれだけ役だてるか?
演者

がん研有明病院有明病院 消化器センター 胃外科
比企 直樹 先生

概要

従来、消化器外科領域において栄養の重要性は述べられてきたが、具体的にどの栄養指標が治療や病態にとって重要な役割を示しているかは具体的になっていなかった。近年、われわれは術後合併症の危険因子として術前プレアルブミンに注目してきた。栄養状態が悪いと術後成績が低下することは一般的に外科臨床でも述べられているが、栄養指標を改善することは臨床成績を改善するかという永遠の疑問に関しては未知なることが多い。
例えば、胃癌による幽門狭窄症例の多くは栄養障害を伴っており、プレアルブミン低値であることが多い。これらの症例に狭窄解除の手術をすぐに行うか、または経鼻経腸栄養チューブを挿入することで、栄養指標であるプレアルブミンを改善してから手術をするかは難しい治療選択となる。
当院における定型的胃癌手術を行った1798症例においてプレアルブミン低値(15㎎/dl)以下)を改善せずに胃切除を行った場合、GradeIII以上の合併症が約49%、感染性合併症も31%で起きていた。この結果より進行胃癌43例の幽門狭窄症例に対して経鼻経腸栄養を行う方針とした結果、プレアルブミンは経腸栄養の期間と相関して上昇した。これらの症例においてプレアルブミンが上昇しない群(プレアルブミン上昇率<10%)23例では全合併症57%、感染性合併症39%を生じたのに対し、上昇した群では全合併症20%、感染性合併症15%と有意に合併症が少なかった。さらに単変量解析ではプレアルブミンが上昇しないことが、合併症の危険因子であることが示された。強制栄養に対して、プレアルブミンを上昇させることが良いのか、上昇する予備能のない症例で合併症が起きるのかは明らかではないが、少なくとも、本研究で合併症をおこしうる症例の絞り込みには役立つ治療戦略であると言える。
本講演では、栄養がどれだけ消化器外科領域で役立っているのかという疑問がどれだけ解決されていて、今後どのように栄養のエビデンスを導き出してゆくべきなのかを考察したい。

世話人 :大阪大学大学院医学系研究科外科系臨床医学専攻 外科学講座消化器外科学 土岐 祐一郎
E-mail: ydoki@gesurg.med.osaka-u.ac.jp
 ※事前申し込み不要・参加費無料※
次回第387回CNCは、冨松拓治先生のお世話で、平成30年5月14日(月)開催予定です。