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第393回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)

第393回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)
日時

平成31年1月21日(月)18:00〜

場所

大阪大学医学部講義棟2階D講堂(吹田市山田丘2-2)

演題

アミノ酸トランスポーターによる多様な細胞機能制御と創薬標的としての意義

講師

大垣 隆一 先生
大阪大学医学系研究科 生体システム薬理学

概要

生体にとって必須の栄養素であるアミノ酸は、タンパク質合成やATP産生など細胞内の様々な生化学的反応の基質として利用される。加えて近年、アミノ酸がシグナル分子としての生理活性を持つことも明らかになりつつある。アミノ酸に応答するシグナル経路として、ロイシン、アルギニン、グルタミンなどのアミノ酸によるmTORC1(Mechanistic target of rapamycin complex 1)経路が挙げられる。mTORC1はタンパク質合成、脂質合成、核酸合成など細胞内代謝の制御において中心的な役割を果たすセリン・スレオニンキナーゼ複合体である。アミノ酸はmTORC1の活性化に必須であることが知られている。
シグナル分子としてのアミノ酸の機能的側面に着目すると、細胞膜上でアミノ酸の選択的膜輸送を担うアミノ酸トランスポーターはアミノ酸シグナル経路の起点であり、広義において受容体に類似する分子としても位置付けることができる。我々の研究室では、大型中性アミノ酸トランスポーターLAT1と悪性腫瘍の関連に着目した研究を進めてきた。LAT1の発現は正常組織では限定的であるのに対し、多くのがん組織で高発現しており、がん細胞に必須アミノ酸を供給することで高い増殖能を担保している。実際にLAT1阻害薬は優れた抗腫瘍効果を示すことから、新たな抗悪性腫瘍薬として期待されている。その作用機序について検討したところ、がん細胞株に対してLAT1阻害薬を作用させると、ロイシンを培地に添加した際のmTORC1の活性化が顕著に抑制されることを見出した。LAT1阻害薬は、タンパク質合成の材料としての必須アミノ酸を枯渇させると同時に、mTORC1に入力するアミノ酸シグナルの遮断を作用機序として細胞増殖を抑制していると考えられる。
またLAT1によるアミノ酸輸送はこれ以外にも多様な細胞機能の制御に関与している可能性がある。その一例として、LAT1が腫瘍血管の内皮細胞の遊走に寄与するという現象と、腫瘍血管新生におけるその意義について紹介する。

世話人:医学系研究科 生体情報科学講座 木原 進士
 E-mail: skihara@sahs.med.osaka-u.ac.jp
※事前申し込み不要・参加費無料※
次回第394回CNCはありません。
第395回は、栄養ディバイス未来医工学 井上善文先生 のお世話で3月11日(月)開催予定です。