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第409回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)

第409回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)
日時

令和5年2月13日(月)18:00〜

開催方法

大阪大学医学部講義棟2階 C講堂(吹田市山田丘2-2)
Zoomによるオンライン同時開催
Webによる参加方法はこちらをご参照ください

テーマ・講師

『スギ花粉米とK15乳酸菌の連日摂取によるスギ花粉症の症状抑制効果の評価』
 大阪はびきの医療センター 主任部長/臨床研究センター長
 橋本 章司 先生

概要

【背景】スギ花粉症は1960年代に最初の症例が報告され、現在も国民の70-80%がスギ花粉に感作(特異的IgE抗体の陽性化)され、30-40%が発症していると推測されている。花粉飛散期には患者のQOLや作業効率が著しく低下することで大きな社会的損失が生じ、スギ花粉症の根本的治療法や予防法の開発が強く望まれている。低濃度アレルゲンの皮下・舌下投与が根本的治療法として期待されるが、長期間の継続的な治療が必要であり、重篤な副作用の発生例もある。このため、抗アレルギー作用を持つ機能性食品が期待されており、当センターで実施した『スギ花粉米とK15乳酸菌の連日摂取によるスギ花粉症の症状抑制効果の評価』について報告する。

【スギ花粉米】農研機構が開発した機能米で、スギ花粉症の主要2抗原の7箇所のT細胞エピトープ部分を連結したハイブリッドペプチド(7 CRP)遺伝子を構築し米に組み込み、胚乳のPB-1粒子内に高濃度のC7HRPを発現させ、連日摂取で直接腸管への高濃度経口免疫効果が期待される。研究1(1日20g、5gの花粉米又は対照米を2016年9月から24週間連日摂取、各群15名; RCT)で翌春花粉飛散期の症状抑制を証明できなかったが、研究2(1日5gの花粉米を96週間長期摂取、10名)で2年目花粉飛散期より症状とT細胞増殖反応値の抑制傾向を認め、96週間目で有意な抑制を認めた。

【K15乳酸菌】キッコーマン株式会社が開発した乳酸菌株(Pediococcus acidilactici K15)で、小腸の樹状細胞を活性化し抗感染(Th1免疫誘導及びIgA産生誘導)作用と抗アレルギー(Th1免疫誘導)作用を示す2本鎖RNAを大量に含み、連日摂取で効果が期待される。研究1(2019年9月よりK15乳酸菌10mg又は対照品を12週間連日摂取、摂取前後の人工曝露誘発試験の症状で評価、各群15名; RCT)で総鼻症状・総症状スコアの総計、鼻汁量等で有意な抑制を認めたが、研究2(同12月より何れかを20週間連日摂取)では翌春の花粉飛散期の症状抑制を証明できなかった。

【考察】両試験品とも安全性・継続性に問題はなかったが、より高いエビデンスを示すためにより大きなサンプルサイズでの評価が必要と考えられた。K15乳酸菌製剤の評価の途中でコロナ禍を迎え、スギ花粉症を含めた臨床研究における複数の教訓も得られ、ご参加いただく諸先生方と共有したい。

※本研究会は医学系研究科 単位認定セミナーです。
※本研究会はどなたでもご参加いただけます。

世話人: 免疫内科学 楢崎 雅司先生
E-mail: mnarazaki@imed3.med.osaka-u.ac.jp
次回、第410回CNCは保健学専攻 生体情報科学 木原進士先生のお世話で2023年6月12日(月)開催予定です