公開講座

研究科主催セミナー・公開講座・セミナー

第408回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC) 第 80回 小児医療センターセミナー

第408回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC) 第 80回 小児医療センターセミナー
日時

令和4年10月17日(月)18:00〜

開催方法

大阪大学医学部講義棟2階 B講堂(吹田市山田丘2-2)
Zoomによるオンライン同時開催
Webによる参加方法はこちらをご参照ください

テーマ・講師

〜ビタミンD不足の現状と生活習慣から見る栄養改善のヒント~
大阪樟蔭女子大学健康栄養学部健康栄養学科公衆衛生学研究室 
教授 津川 尚子 先生

概要

ビタミンDの栄養指標となる25-hydroxyvitamin D(25OHD)の血中濃度低下は、骨折リスクを上げるだけでなく、転倒や心血管疾患、免疫、感染などに関連することが報告されている。ビタミンDは、食事と紫外線照射による皮膚での産生によって供給されるため、季節変動は当然のことながら個人の食生活やライフスタイルに大きく影響される。日本人、特に女性では血中25OHD濃度は20 ng/mL未満(欠乏)が半数以上を占め、若年女性では8~9割に及ぶ場合もある。日本人の主なビタミンD摂取源は魚類であるが、魚介類摂取量は2000年以降年々に低下している。一方、日本人の食事摂取基準2020年版では目安量が5.5 µg/日(2015年版)から8.5 µg/日に引き上げられた。日常生活での適度な日光浴を前提に策定されたものであるが、8.5 µg/日は血中25OHD濃度を20 ng/mL以上に維持するには十分ではない。ビタミンD栄養の低下には近年の日光を浴びにくい生活スタイルまたは日光を避ける行動、さらには疲労・ストレスなど精神的要因も原因となる。ビタミンD栄養の経年変化を母乳中濃度で比較したところ、2016年~2017年の母乳は27年前の母乳に比べてD3・25OHD3濃度ともに明らかに低下していた。さらに、コロナ禍での外出自粛はビタミンD栄養低下を招き、低ビタミンD栄養状態はCOVID-19の重症化と関連する可能性もある。ビタミンD栄養は全てのライフステージで改善すべき問題であるが、改善し難い理由の一つに個人の気付きが無いことが挙げられる。自らの血中25OHD濃度を知ることができない一般健常人に対して栄養改善を勧めるには、簡易栄養調査表の利用などで気づきを促し、ビタミンD含有食品の摂取方法や積極的なライフスタイル改善の情報発信が重要になるだろう。

※本研究会は医学系研究科 単位認定セミナーです。
※本研究会はどなたでもご参加いただけます。

世話人:小児科学 木村武司先生
E-mail: tkimura@ped.med.osaka-u.ac.jp
次回、第409回CNCは免疫内科 楢崎雅司先生のお世話で2023年2月13日(月)開催予定です。