教授リレーエッセイ

手作りエコ学会の経験 生体病態情報科学講座 山本 浩文

 今年(2025年)の6月に第34回日本がん転移学会を淡路島で開催しました。通常は、大阪国際会議場か、千里ライフサイエンスセンターでの開催となるところ、大阪万博と時期が重なり、ホテルの確保ができない状況が続いたため、大阪は諦めて淡路島の淡路夢舞台国際会議場での開催としました。しかし、大阪での開催と比べて、いろいろな機械や物品の搬送や、運営会社人員の宿泊費用もかさみ、予算規模が大きく膨れ上がりました。かつて医学科で門田守人先生や森正樹先生の先導の下、日本癌学会の大阪開催で二度にわたり事務局長を担当した時には、開催資金は十分に集まり、私はいかにこれを効果的に学会運営に反映させるかということに集中すればよかったのですが、今回は、資金集めにも難渋し、学会運営をコンパクトにするにはどうしたらよいかと考えました。

 ひとつ思い浮かんだのが、保健学科でいつも学生発表会の時に行っている準備のスタイルです。事前にスライドを提出してもらい、当日はそれを順番に流してゆくだけというやり方です。通常、学会では、スライドチェックの場を設け、複数のPCで担当員がスライドの映り方や動画の動作環境に問題がないかを発表直前に確認し、それを会場のオペレーターに移送する形をとります。しかし、事前にスライドを提出してもらい、順番に整理しておけば、スライドチェックに係る人員を省けてコスト削減になる!これは名案だと思いました

 一方で、直前までスライドを直したいという方も多く、締め切りが早まるというマイナスもあります。結局、断行したわけですが、思いもよらぬ事態が起きました。事前のスライド提出はスムーズに集まりましたが、Macで作ったもの、Windowsで作ったものを、別の機種でダウンロードしたり、別機で映写すると文字ずれが起きたり、サイズのずれが生じるといった問題が発覚したわけです。Macで作ったスライドはMacでダウンロードして、これを演者に送り、問題なしの確認をもらってMacで投影する(Windowsも然り)という手順が必要とわかりました。スタッフで分担するにしても間違いは許されず最終チェックの時間もないので、168演題全てのスライドのチェックを自身でやることになり、学会開催もあと数日というところでとても厳しい日々が続きました。幸い、本番で夢舞台の大スクリーンに写し出されたスライドは全て満足のいく形での映写が叶い、学会が終わった瞬間に安堵した次第です

 本学会では事前準備と二日間の当日運営共にできるだけ教室のスタッフ、大学院生、学生、社会人となった卒業生に加えて消化器外科大学院の卒業生からの応援も受け、受付、会場係、クローク、座長受付、当日スライド差し替え、など総勢30名を超えるチームで心をひとつにして手作りの学会運営を行った結果、エコ&コンパクトに学会を終えることができました。しかし、もし今度、学会を開催するとしたら、やはりスライドの事前収集をしますかと聞かれたら絶対にしませんと答えるでしょう。