教授リレーエッセイ

保健学における検査技術科学の必要性 保健学専攻 医療技術科学分野 生体情報科学講座(神経生物学) 稲垣 忍

保健学専攻
医療技術科学分野 生体情報科学講座(神経生物学)
教授 稲垣 忍

「保健学」とは、健やかさを保つために、“からだ”と“こころ”の健康を科学する学問である。そのためには高度な専門知識と深い学識をもって、医療現場で活躍しつつ、創造的能力を持ち未来の医療を拓こうとする志の高い看護職者・医療技術者が社会から求められ、基本的な自然科学の知識や論理的な思考、幅広い社会常識が必要である。そのような「保健学」を支えている「看護学」「放射線技術科学」「検査技術科学」のうち、「検査技術科学」は、特に“からだ”に着目し、健康人や病気の人が発する内部情報を物理的、化学的、分子生物学的技術を駆使して分析する学問であり、歴史的にも若々しく、かつ発展性と将来性に富んだ分野である。学部では生体情報を分析するだけでなく、生体が情報を発信する機構を理解して新たな検査法を開発したり、検査値の精度管理や情報科学処理法を体系化したりするのに必要な技術科学を学び、これらの教育によって臨床検査技師としてだけでなく、バイオサイエンスの広い分野で活躍し、疾患発生の予知と予防、疾患の診断、治療法の効果判定が出来る等、日本の未来を支えうる人材養成を目指している。

進学率約70%である博士課程にあがると、それまでの基礎知識をもとに、自分でものを考える能力、解決できる英知を持った以下の人材を養成することを目指している。

  • 医学や生命科学の最先端の知識や技術を修得し、それに基づき医療現場で検査技術の改良や考案を行う能力を持った臨床検査技師
  • 深い科学知識に基づいて、将来、企業などで新しい検査技術や検査機器を開発できる医療技術科学者
  • 高度な生命科学的知識及び方法論を修得し、将来、大学などで検査技術科学の教育及び創造的な研究を行いうる教育・研究者

その他にも博士課程では、がん医療に関わる専門職を養成する「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン」の教育コースを履修できる。

このように、検査技術科学とは“からだ”の健康を科学する「保健学」になくてはならないものである。最近は自ら考えて質問したり、課題を相談に来たりする探究心あふれる学生が少なくなってきていると感じでいるので、今後より一層自然科学に興味を持ち、はまるほどの魅力を感じるように指導していきたい。