教授リレーエッセイ

花粉症、豆知識 保健専攻 看護実践開発科学講座(アレルギー管理・精神看護学研究室) 荻野 敏

保健学専攻
看護実践開発科学講座(アレルギー管理・精神看護学研究室)
教授 荻野 敏

「花粉症」、この疾患について十分に理解しているかどうかは別にして、 ほとんどの人がご存知のことと思います。今年もこの文が出て少しすると 花粉症の季節です。患者さんにとっては、春になることがうれしいのか 悲しいのか?現在では軽い人を含めると花粉症患者は人口の2割以上とも 言われています。ついでながら大学生の30%は罹患しています。

今日は、この花粉症について皆さんが誤解しやすいことを含め簡単に 説明します。

「花粉症」、定義は「花粉が原因の1型アレルギー」です。 「1型アレルギー」、この説明が難しくなりますが、簡単に言えば外から 異物が入ったときにおこる過剰な反応の一つです。この反応の起こし やすさには体質も関係するとされています。

理論的にはすべての草木が花粉症の原因になります。わが国では スギが最も有名ですが、北欧ではシラカバ、アメリカではブタクサ、 また変わったところではフランスではブドウ(食べてではありません)、 マロニエも原因になるといわれています。わが国では花粉症といえば スギ、と思っている人も多いですが、その他にもヒノキ(スギ花粉症の 70%の人はこれにも反応します)、シラカバのような樹木、5月頃からは カモガヤ、ナガハグサのようなイネ科花粉(と書いても分からない 人のほうが多いでしょうが)、秋にはブタクサ、ヨモギ、 セイタカアワダチソウのようなキク科花粉が原因の花粉症が見られます。 変わったところでは和歌山ではウメ花粉症、青森のほうでは リンゴ花粉症も報告されています。まだまだ他にも珍しい花粉症が たくさん報告されています。

それではどのような草木が花粉症の原因になりやすいか? 簡単に言えば風媒花です(この意味が分からない人は調べてください)。 なぜか?簡単に言えば風媒花は種保存のために極めて大量の花粉を 作り遠くへ飛ばさなければなりません。そのようなものだけが現在も 存続しているわけです。例えばスギ花粉は、200kmも飛ぶとも 言われています(それをどのように観測したのでしょうか?)。 風媒花に対する言葉が虫媒花です。虫媒花は、花粉の産生量も 少なく飛散距離も短い。種保存のためにはどう変化したか? きれいな花をつけ蜜をためた訳です。風の変わりに運ぶのを虫に 頼んだわけです。あえて言えば、「きれいな花ほど花粉症の原因には なりにくい」。動物だけでなく植物、この世に生きているすべての ものが種の保存のために努力をしているわけです。そういう自然の 法則があるところに、我々人類の体質や、社会環境などに何らかの 変化がおこり、その結果アレルギー反応を起こしやすくなり、 花粉症が広まってしまいました。この体質の変化、社会環境の 変化については、今回は書きません。

花粉症の対策は?治療の基本で最も大切でほとんど不可能なことは、 花粉を浴びないこと。これが基本です。鼻、眼に入る花粉の量が 少なくなるだけで症状は軽くなりますし薬も効きやすくなります。 花粉症と思ったらどうしたらよいか?専門医を受診し、原因の花粉を 調べてもらうことです。実際には風邪の人や別の原因で鼻水が 出ている人も少なくありません。最近は(スギ)花粉症の季節に なると新聞、テレビなどで、飛散予報を放送しています。 それを利用し生活パタンを考えましょう。半分くらいは当たります。 そして、外に出るときはマスクとメガネ。このようなセルフケアが 本当に大切です。マスコミには、「これで花粉症が治る、、、」 とかでいろいろな薬のようなもの、食品などが出てきますが、 話半分です。現在のところ、花粉症患者全員を100%よくする 治療法は花粉を浴びないこと以外ありません。

花粉症患者さんは、生活範囲の植生も勉強しましょう。何らかの ときに役立ちます。大阪大学、特に吹田キャンパスでは4月から6月頃に かけてカモガヤなどのイネ科花粉の飛散がかなり見られます。 スギが終わってからも症状が続き、ひどい人は喘息のようになります (スギでの喘息は極めて稀です)。このような場合もあるということを 頭の隅にでも入れておいてください。 最後に、昨年から私のHPに吹田キャンパス(というより保健学科ですが) でのスギ花粉飛散の簡単な状況を流しています。暇な人はご覧下さい。