教授リレーエッセイ

臓器別再編成と内科学 消化器内科学 竹原 徹郎

消化器内科学
教授 竹原 徹郎

消化器内科学講座は大阪大学の内科系講座の臓器別再編成に伴い2005年に設立された新しい教室である。私が大学を卒業した1980年代は、内科学講座は第一内科から第四内科まで4つの講座の布陣であり、例えば第一内科であれば、すべての内科疾患をその講座で賄うことが原則であった。私自身もなにか特定の疾患だけではなく、いろいろな疾患をかかえる患者さん全体を診たいという動機で、卒業後第一内科の門をたたいた。もちろん当時も、内科学の教科書に記載されている各領域の専門性は高く、実際には各講座内に消化器、循環器、内分泌などを専門にする研究室があって、よくわからないときは他の研究室の先生にコンサルトするのであるが、すべての内科領域に関与しているという不思議な充足感はあったように思う。2005年の臓器別再編成により、ナンバー内科の壁が取り外され、臓器別の講座間でコンサルトをしあうという形態になり、大学全体という視点にたつときわめて合理的なシステムになったといえる。また、個々の診療科も内科学全体としての一体感を保つために、運営委員会や勉強会を定期的に開き、大学全体として以前よりもパワフルな「内科」になることを目指している。

内科はジェネラルにいくか、スペシアリティを求めるかというのは永遠の議論ではあるが、これだけ専門性が高くなり、また多くの専門医をかかえる都会の医療というものを考えると、ジェネラルという理念を持ちながらもスペシアリティを追及するのが自然であると思う。しかし、そのようななかでも、内科全般の知識をもち専門領域の診療にあたることが重要である。昨今みられる、部分をみて全体をみないという傾向は、内科系科の臓器別再編成だけでなく、パターナリズムからの脱却などの医師患者関係の変化やDPC導入などの医療のシステムの変化が多大な影響を与えているように思う。個々の変化は望ましいことであると思うが、昔のように入院してきた患者さんの全身を診るということが、とても難しい時代になっている。

消化器内科は腹痛をはじめとしたよくある症状の患者さんがまず訪れる診療科であり、消化器疾患以外の病気に遭遇することも多い。また、対象としている臓器も、食道、胃、大腸にはじまって、肝臓、膵臓と広範で、炎症や癌など頻度の高い多様な疾患を扱っている。そういう意味で専門性と一般性をあわせもつ内科領域である。毎年、4月から7月にかけて医学生や研修医向けに教室の説明会を行っているが、ジェネラルとスペシアリティ、そのような嗜好の若いドクターをみると、30年近く前にそのようなことを考えて消化器内科医を目指した一人として、とても懐かしい思いがする。

教授 竹原徹郎
内科学講座 消化器内科学
当研究室は、旧第一内科・旧第二内科・旧第三内科の消化器グループを統合し、2005年6月に設立されました。初代 林紀夫教授を引き継ぎ現在に至ります。同窓会員は700名を超え、30を超える関連病院と密に連携し、診療・研究・教育を行っています。