教授リレーエッセイ

がん看護専門看護師をもっと身近なものに 看護実践開発科学講座 急性期・緩和ケア学 荒尾 晴惠  

教授 荒尾 晴惠

 

 看護師の国家資格取得のためには、法律に基づいた教育を受け、その後、国家試験に合格する
ことが必要です。では、資格取得したのちの看護師のキャリアアップに専門看護師という資格が
あることは、あまり認知がされていないのではないでしょうか。私は、前任校の時代から、
大学院修士課程においてがん看護専門看護師の教育を行っており、阪大着任以後も継続しています。
エッセイ執筆の機会をいただきましたので、この場をお借りして、専門看護師・がん看護専門
看護師の紹介ができればと思います。

 医療の複雑化、高度化、患者・家族の医療に対するニーズの多様化などを背景に、患者を中心に
据えたチーム医療を実現していくために、専門性の高い看護師が求められるようになりました。
そのため、1980年代から専門看護師制度の検討が始まり、1994年に専門看護師制度が誕生しました。
大学院修士課程での教育を修了後、資格試験を受けて資格取得ができる制度です。教育機関の認定は
一般社団法人日本看護系大学協議会が行い、資格認定は、公益社団法人日本看護協会が行っています。
専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist)は、実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究の
6つの役割を果たします。専門看護師の専門分野は現在14分野あり、2023年12月の総数は、
3297人です。このうちがん看護CNSは、1083人います。総数に対してがん看護CNSの占める割合が
多いのは、文部科学省が取り組んでいるがん専門医療人育成事業により、全国にがん看護CNSの
教育課程が作られたことが一因と考えられます。現在第4期の事業が展開されています。私達も
大阪大学拠点として、連携大学と共にこの事業に取り組んでおり、その一環として、がん看護CNSの
育成を行っています。現在までに26人がコースを修了し、そのうち23人がん看護CNSの資格を取得
しました。修了生は、がん診療連携拠点病院において、複雑な問題を抱える患者ケアで卓越した能力を
発揮し、チーム医療に貢献する活躍をしています。

 2022年4月のデータによれば、がん診療連携拠点病院456のうち、専門看護師がいる施設は、267で
延べ629名が登録されています。このように専門看護師の配置はがん診療連携拠点病院6割弱に
とどまっているため、全拠点病院に配置されるには、さらなる人材養成が必要です。
 
 専門看護師育成は、手間と時間がかかりますが、チーム医療の要となっている修了生の活躍を励みに
して、引き続き頑張っていきたいと思います。