教授リレーエッセイ

子供の頃なりたかった職業 遺伝統計学 岡田 随象

 遺伝統計学
教授 岡田 随象

男の子は「サッカー選手」、「野球選手」、「医師」、女の子は「保育士」、「医師」、「パティシエ」、これが最近の子供が将来なりたい職業だそうです。私が子供の頃は、「パイロット」や「大工さん」もあこがれの職業だったでしょうか。かつては、「サラリーマン」や「漫画家」、「おもちゃ屋さん」が挙がったこともあるようです。そういえば最近、「ユーチューバー(動画投稿者)」がランクインして話題となっていましたっけ。
私自身は、周りの男の子がそうであったと同じく、野球選手に憧れていました。できたばかりの東京ドームで活躍するプロ野球選手達を見て、一度でいいからマウンドに立ってみたい、ホームランを打ってみたいと感じたものです。
ただ残念ながら私は体格も運動センスにも恵まれず、クラスの野球大会でも打順は最後、という状況でした。どうやっても越えられない壁があるのだ、という現実を幼い時に教えてくれたのも野球でした。

子供が憧れる職業には、「学者」も上位に入ることが多いようです。私も子供の頃から、研究への漫然とした憧れがありました。全く適性のなかった野球と比べると、研究者は向いていたようです。
医学部を卒業したものの臨床現場から離れ、気が付いたら研究を専門とするようになっていました。私の専門分野は遺伝統計学といい、生命の設計図であるゲノム情報の個人差と、病気などの形質情報の個人差の関わりを調べる学問になります。「僕がどんなに頑張っても投げられない速い球を、何故彼は簡単に投げることができるのだろうか」、
「生まれながらに野球が上手な人と下手な人がいることに、どんな意義が込められているのだろうか」、幼い時に感じた挫折感を伴った経験が、研究の原点になっているのかもしれません。

大阪大学医学系研究科に赴任して2年ほどが経ち、お陰様で先生方との交流も増えてきました。
研究科の先生方は、優れた臨床家・研究者であることはもちろんですが、多彩な才能を発揮されている方が多いことにも驚きました。まだまだ自分の可能性を制限してはいけないなと反省した次第です。「ドラフト会議は無理でも、草野球の補欠くらいは声がかかるかもしれない」、そんなことを考えながら、バッティングセンターに通う日々を送っています。

教授 岡田随象
ゲノム生物学講座 遺伝統計学
遺伝統計学教室は、大学院医学系研究科臨床遺伝学教室(先代:戸田達史教授)の後継教室として平成28年4月に発足しました。遺伝統計学は、遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点から評価する学問であり、当研究室は大規模コンピューターを用いたゲノムデータ解析を専門とする、ドライの研究室として活動を行っています。