教授リレーエッセイ

被験者体験を通して見えてくるもの 生命育成看護科学講座 ウィメンズヘルス科学 渡邊 浩子  

教授 渡邊 浩子

研究で多くの妊孕世代の女性に協力をいただいている。Take ばかりでは申し訳ないので、Give できることがあればと思い、大阪大学の顔にもなっているツインリサーチセンターに、一卵性双生児の被験者として姉とペアで参加登録している。双生児研究が世界中で行われおり、ツインリサーチによって生活環境やライフスタイル要因が、人間の健康に及ぼす影響を解明できることを阪大着任後に初めて知った。

登録後すぐに、フルパッケージの人間ドックを受けた。スタッフによる丁寧な研究の説明、効率的に組まれた調査スケジュールは、集団調査を実施する機会が多くある自身の研究にも大いに役立っている。一方で、途中で回答をやめたくなるほどの膨大なアンケートは、どうにかならないものか、回答に要する時間は20分が限界等と、自身が体験して見えてくるものもある。

先日は某化粧品会社の皮膚の研究に参加し、約5時間にわたるお肌のチェックを受けた。会場に集まっていたどの双子ペアも見分けがつかないほどのそっくりさん。世の中にこんなにもよく似た人達がいるんだと驚いた。皮膚の研究と聞いていたので、2か月前から入念にお肌のお手入れをして当日の測定に臨んだ。しかし、送られてきた顔面皮膚分析レポートは、シミ、シワ、きめ、毛穴の写真が掲載され、「あなたの実際の年齢〇歳」、「あなたの肌年齢〇歳」の数字のみ。それも実年齢プラス4歳という期待に反する衝撃的な数字。現実を素直に受け止めるが、フォローアップの一文ぐらいあってもよさそうな。「保湿が足りないようです。朝夕の保湿をすることで、実年齢に近づきますよ」というようなフォローアップの一文でもあれば、今後の対策を講じることができる。結果の送付の際は被験者心理を察し、フォローアップの一文が必要であることを学んだ。自身が被験者として参加することで見えてくるものが多くある。しかし、ツインとして生まれたことで世の中に貢献できていると思えることが何より心地よい。これからも機会があれば、被験者体験をしたいと思っている。

最後に、研究組織メンバーとして、そして被験者としても参加しているツインリサーチセンターから、今後も人々の健康の保持増進に寄与する多くの研究成果が生み出されることを願う。