教授リレーエッセイ

ウグイスのぐぜり鳴き 保健学専攻 医用物理工学講座 教授 村瀬 研也

保健学専攻
医用物理工学講座
教授 村瀬 研也

植物や動物の状態が季節によって変化する現象を「生物季節現象」と呼ぶのだそうです。

桜の開花などが代表的なものですが、ウグイスの初鳴きも「生物季節現象」に含まれます。

桜前線はよく聞きますが、地図上でウグイスのさえずりを初めて聞いた日が同じ地点を結んでいくと「ウグイス初鳴き前線」なる線が描けるそうです。私が現在住んでいる大阪北部の豊能郡豊能町では、近くに日本の里山百選に選ばれた兵庫県川西市黒川があります。そのせいか、野鳥も多く、私どもの小さな庭にも種々の野鳥が飛んできます。

毎年春先、2月末から3月頃の早朝にウグイスのさえずりが聞こえるようになります。ウグイスが「春告げ鳥」とも呼ばれる所以を感じるときです。初めは「ホ—ホケキョ」とさえずることができません。「ホ—ホケキョ」の途中で止まったり、調子はずれのさえずりになったりします。しかし、練習を重ねていくとだんだんと上達していきます。上達の速さには、人と同じように個体差があるようです。若鳥は幼い頃に聞いた他のウグイスの鳴き声を覚えていて、次の年の春にそれを思い出しながら練習してうまくなっていくそうです。このうまくなっていく過程を「ぐぜり鳴き」と呼ぶのだそうです。彼らにとっては、縄張りの確保や繁殖にとって非常に重要な行為で、真剣そのものでしょうが、「ホ—ホケキョ」の途中で止まったり、調子がはずれたりすると「まだまだやなー、もっと頑張りやー」と声をかけたくなります。

私が所属している保健学専攻医用物理工学講座では、学部生は4年生のときに各研究室に配属されて約1年間研究を行い、その成果を卒業論文にまとめて研究発表を行います。ちょうど、ウグイスの「ぐぜり鳴き」の時期と新しい4年生が研究室に配属される時期が重なります。学生達は、先輩の大学院生達に実験方法や機器の操作方法を教わりながら実験技術を身につけていきます。そして、約1年後には立派な研究成果を出してくれています。約1年後の卒業研究発表のときには、彼らがうまく「ホ—ホケキョ」とさえずることができたと実感するときです。

毎年春先にウグイスの「ぐぜり鳴き」を聞くと、学生達もウグイスと同じように「ぐぜり鳴き」を経て立派に育って欲しいとの願いが込み上げてきます。