教授リレーエッセイ

気候と学問 麻酔・集中治療医学 藤野 裕士

麻酔・集中治療医学
教授 藤野 裕士

暑い。温度管理された手術室で終日勤務した後に、屋外に出るとムッとした熱気に襲われる。地球温暖化と言われて久しく毎年そう思うのだが、今年の夏は格別暑く感じる。実際米どころも北へ移動しているようであるし、昔4月上旬だった桜の開花は3月に、紅葉は下手をすると12月にずれ込む年もある。このままどんどん暑くなるのは想像したくもないのだが、世間では必ずしも温暖化一辺倒では無いようである。近年、太陽活動の異常低下の可能性が指摘されているらしい。研究データでは、太陽活動が異常なほど低下する『極小期』に間もなく突入する可能性があるとのこと。2013年の夏は超暑くなるが、2013年以降は太陽活動が低下、数十年の停滞期に入り気温が低下、プチ氷河期に突入するという話がある。地震の予測と同じで何となく眉唾な感じもするが、こう暑いと信じたい気持ちも沸いてくる。

頭脳活動の観点からは気温が高いのは不利だと思う。そういえば昔留学していたボストンは10月末から5月初めまで雪が降っていたのを思い出す。気温が低いだけでなく、雪で外に出られないのでやることがないため学問が発展したとか言う説も耳にした覚えがある。サンパウロ大学の知り合いによると、ブラジルでも南部の人は勤勉で北部に行くほど(気温が上がるほど)働かなくなると言っていた。ブラジル人はみんな同じように見えるが、確かに気温が及ぼす影響は大きいのかも知れない。日本人は地域による差はそんなに大きくないという気がするが、それでも沖縄タイムなどという言葉があるぐらいで、気温の影響がないとは言えない気がする。

さて私の部署の秘書の一人に大変寒がりな方がいらっしゃる。夏はまだしも冬などはちょっと気を許すと空調の設定温度が28℃になっていたりするので外から医局に入った瞬間に頭がくらっとしたりする。私は特に暑がりな方なので自分の適温に強要するのも何だと思い、しばらくは我慢してみたり努力するものの結局根負けして設定温度を下げるようお願いすることになる。これが一日何度も繰り返されている。誤解がないよう付け加えておくが、彼女は大変優秀で私には灼熱の中でも頭脳労働もサクサクとこなしている。今度医局の中用のセーターでも贈ることにしよう。

教授 藤野裕士
生体統御医学講座 麻酔・集中治療医学
当研究室は臨床業務が手術室麻酔、集中治療、疼痛治療の3部門からなるため、研究対象も麻酔薬の薬理、急性呼吸不全、疼痛メカニズムと大きく3領域に分かれています。これらの研究領域について、細胞あるいは小動物を用いて、基礎研究から臨床研究まで実施しています。