教授リレーエッセイ

3D画像と放射線診断学 放射線医学 富山 憲幸

放射線医学
教授 富山 憲幸

最近巷ではアバターなどの3D映画が大変な人気です。残念ながら、私は見損ねましたが、すでにご覧になった諸氏も多いのではないでしょうか。マスコミではそのリアルな立体画像をしきりに絶賛しています。また、3Dの機能を搭載したテレビが発売開始となり、一般家庭にも広く普及するのはそう遠くない話かもしれません。さて、私が専門とする放射線診断学は体内を物理化学的な手法を用いて画像化し、異常を発見して診断する学問です。この分野においても3Dの技術は、以前より利用されてきました。もう30年以上前から血管造影検査ではステレオ撮影が行われており、撮影された2枚の画像を横に並べてステレオ視すれば、手前に迫ってくるような飛び出す画像が得られていました。私が研修医の時には、夜に同期の研修医が集まって、両目を寄り目にしながらステレオ視の練習をしたものです。初めてステレオ視ができたときには、飛び出す血管画像に感動したのを覚えています。また、近年では胎児の超音波画像で3D技術が応用され、体内の赤ちゃんの顔の輪郭のみならず凹凸まで識別できる画像をご覧になったことがあるのではないでしょうか。このように最近の診断機器では、立体的な3D画像や3D動画を容易に作成することが可能で、まるでコンピューターグラフィックスを思わせるような映像を生み出すことができます。講義の中で、実際の医療データを用いた3D動画とコンピューターグラフィックスだけで作成した3D動画の両方を使うことがあるのですが、説明を加えないと見分けがつかないこともあります。3D映画や3Dテレビは今までの映画やテレビと比べると目の疲れが起こりやすいと言われています。放射線診断にも3Dの波がどんどん押し寄せてくることが予想されます。ただでさえ、放射線科医は目を酷使することが多いので、戦々恐々です。

放射線診断学の進歩は急速で、その重要性は年々増加しています。画像診断機器の飛躍的な進歩やコンピューターの高機能・高速化により、頭から足の先まで一瞬で検査ができたり、今まで可視化できなかったものが画像として描出することが可能となってきました。少しずつSF映画やSFドラマの世界に登場する診断機器に近づいていると言えると思いますが、今のところこれらの進歩は放射線科医の負担を増やしているのが実情で、なかなか、スタートレックに登場するドクターマッコイのようにはいかないようです。

はっと気がつけば、我が家のテレビは未だにアナログでした。

教授 富山憲幸
放射線統合医学講座 放射線医学
放射線医学は物理化学的な方法論を用いて生体の情報を画像として捉え、得られた画像から診断を行う学問です。近年、診断機器の進歩と相まってこの分野の発展はめざましく、その重要性がますます高まってきています。
当研究室では、全身のあらゆる部位の画像診断と画像を応用して経皮的治療を行うインターベンショナル・ラジオロジー(IVR)を広く行っています。