ノーベル賞受賞のお祝い 神経情報学 栁澤 琢史
坂口志文先生のノーベル賞受賞の報に触れ、まずは心からお祝いを申し上げたいと思います。もっとも、私と坂口先生は同じ大阪大学に所属しているとはいえ、日常的にご一緒する機会はほとんどなく、本来であればお祝いの言葉を述べるのもおこがましいところです。ただ、これはあくまでエッセイということで、その点はどうかご容赦いただければと思います。
私自身は医学部に入る前に物理学を勉強していたので、学生時代に「ノーベル賞」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは湯川秀樹先生でした。大阪大学で研究をされ、世界的な成果を挙げられた存在です。同じ大学で、ノーベル賞に至るような研究が生まれてきたという事実は、世代を超えて大きな励みになります。坂口先生の受賞もまた、「大阪大学から世界に届く研究ができる」という実感を、改めて強く与えてくれました。
一昨年は、Geoffrey Hinton教授とJohn Hopfield教授がノーベル賞を受賞されましたが、その基盤には理研の甘利俊一先生や大阪大学の福島邦彦先生の貢献があり、日本の研究が世界の潮流を形作ってきたことを再認識しました。誰が受賞したか、どこで研究していたかという点も、重要ではありますが、それ以上に自分たちと地続きの研究環境から、世界を変える成果が生まれていることが、大きな励みとなります。
こうした先達の姿を見ていると、現役の教授として、自分は何をすべきなのかを自然と考えさせられます。良い研究環境とは何か、その答えは一つではないと思います。ただ、多様な意見が許容され、さまざまな挑戦のチャンスが存在することが、大学の良さではないかと感じています。思い返せば、私自身が大学院生だった頃も、脳外科医をしながら情報系の研究室に出向させていただき、医局でプログラムを書き続け、どちらの研究室でも摩擦を感じつつ沢山の勉強をさせて頂きました。指導して頂いていた先生方が忍耐強く、自由で挑戦できる環境を作ってくださったことで、現在の研究を発展させることができたと感じ、今でも心から感謝しています。
大阪大学がこれからも、多様性とチャンスに満ちた場所であり続けるように。坂口先生の受賞を祝福しつつ、その一端を担えるよう、微力ながら努力を続けていきたいと思います

