猫がつないでくれるもの 生命育成看護科学講座 山崎 あけみ
家族と暮らす自宅近くの赤城山麓にある保護猫シェルターで、ボランティア(以後ボラ)をして4年になる。シェルターは病院と同じ、休めない。毎年正月には、必ずボラに入るようにしている。わずかの時間でも確実にボラがシフトに入ることで、スタッフさん達が少しでもお休みできればと思う気持ちと、正月には愛猫(ミル)との思い出もある。はじめて一緒に暮らした猫、ミルは、かかりつけの獣医師からある日腎臓病と診断され、その1年半後の元旦、虹の橋を渡った。前任校での年末年始は、修士論文の追い込みの時期で、確か、終末期の過ごし方の意思決定における悪性グリオーマ患者・家族への看護方略というタイトルの修論を添削していた。ミルは幾度も痙攣をし、私は腕の中で看取った。
さてこのシェルターは、様々な理由で保護された動物に譲渡先が見つかるまで生活の場となるだけでなく、獣医師が、専用車で近隣に出向いてのTNR(Trap:捕獲,Neuter:不妊去勢,Return:元の場所に戻す)も行っている。猫は概ね、家猫と外猫とに区別されるのだろうか。外猫は、熊ほど甚大な危害を及ぼす害獣ではないかもしれないが、繁殖力が高く、生態系のバランスが崩れると市民生活に悪影響を及ぼしたり、そのことが猫への虐待の一因となったりもする。そこでTNRが重要になる。不妊去勢済みの印として先を少しカットした耳をさくら耳と呼び、地域の一員として猫が暮らす上での第一歩である。先日、法善寺横丁で、観光客が「さくら耳だね」と話しているきれいな毛並みの猫3匹に会った。彼らは、争わず餌を食べ、静かに佇んでいた。訪れた人々は、そっと猫に触れ、あるいは遠巻きにしばらく眺めていた。そこは、人と猫双方にとって穏やかな空間であり、彼らはここの地域猫なのだと感じた。
地域猫とは、住民が協力して世話をし、見守ることを前提に地域で暮らすさくら耳の猫である。地域猫活動は、猫を適切に管理し人との共生をめざす。例えば公園で、誰かが毎日決まった時刻に餌やりをして食べ終わるまで見守り、後片付けをする。猫トイレも設置し、シフトを組んで清掃も毎日行うが、それでも「餌やりをやめてほしい」という声があがることもあり活動の難しさは否めない。しかし猫は、人に世話をされるだけの存在ではないと思う。持続可能な地域猫活動は、一人ではできないので、猫つながりの有志によるネットワークづくりになることもある。難しい案件が生じると、近隣住民で話し合ったり、時には自治体に相談する原動力になったりもする。猫は人に、知恵を絞り、他者とつながる勇気や力を授けているという側面もある。
まもなく子猫のシーズン到来、シェルターは賑やかになる。久しぶりに月末あたりにシフトに入ろうか。ボラ終了時「山崎さん、また、いつでも来てくださいね。」とお声掛け頂くと、暖かい気持ちになるから。
